目は私たちの体の中で唯一「露出した臓器」といわれています。

そして、角膜や網膜には血液が通っていません。血液が通っていると、それが邪魔になって見えにくくなってしまうからです。

 

このような状態の目を外から守ったり、栄養・酸素を供給したりするのが涙です。

普段は涙のことなど考えたこともありませんが、いざ涙の量が極端に少なくなるドライアイになったとき、私たちはその重要性に改めて気づくことになります。

涙が出るメカニズム

私たちが涙を意識するのは、悲しくて涙がボロボロ流れたり、あくびをして涙が出たときなどです。しかし、実際には常に涙は目の表面を流れています。

涙は、血液を原料として上まぶたの内側にある「涙腺」という器官で作られます。そこから管を通って目頭(鼻の近く)から目尻(耳の近く)に向かって流れていきます。

 

そして、目尻の奥の方にある「涙嚢(るいのう)」にたまってから、鼻へと流れ込みます。

目薬をさして、その成分を長く目の表面にとどめておきたい場合は、目尻を指でそっと押さえると、鼻への流れを止めることができます。

涙の成分

涙の味って、しょっぱいですよね。涙は98%が水ですが、1.5%はナトリウムをはじめとする成分が含まれ、残りの0.5%はタンパク質です。

涙は3つの層から構成されています。角膜に近いところから「ムチン層」「水層」「油層」に分かれています。

 

「ムチン層」は、ヌルヌル成分で、涙をできるだけ長く角膜にとどめておき、さらに粘膜を守る働きがあります。

中間にある「水層」は、目に酸素を運ぶ役割を持っています。

一番外側にある「油層」は、油膜を張ることで涙が蒸発することを防いでいます。

こんなにある!涙の4つの役割

①目に入ったゴミを取り除く

これは、日常的に誰もが経験することではないでしょうか。目に異物が入ると、反射的にまばたきをして涙を出して洗い流そうとします。

さらに涙に含まれる塩分には殺菌作用があり、細菌やウイルスから、目を守っています。

②乾燥から目を守る

目は露出した臓器です。粘膜は乾燥にとても弱いので、涙によって常に潤いを保つことができます。

まばたきをせずに目を見開いていると、目が痛く感じられますが、これは目が乾燥してしまったため、目からのSOSともいえるのです。

まばたきには重要な役割があります。
詳しくはこちら⇒まばたきの3つの役割とは?

③酸素・栄養供給

目の表面である網膜や角膜には、血管がありません。そのため、栄養補給、酸素補給は、涙によって行われます。

それと同時に、細胞から出た老廃物なども同時に流して、いつもきれいな状態をキープしています。

④はっきり見えるようにする

角膜は精密なカメラのレンズと同じ働きをしています。もしカメラのレンズが曇ってしまったら、拭くことができますが、目はそういうわけにいきません。その役割を涙が担っています。

 

レンズの表面が滑らかになっていることで、凹凸がなくなり、物がゆがむことなくはっきりと見えるようになります。

涙の不思議

なぜ悲しいと涙が出るのか

人は、悲しかったり、辛いとき涙が出ます。もちろんうれしいときや感動した時にも出ますが、ほとんどは負の感情のときが多いですよね。

 

これは、副交感神経が働くからです。

副交感神経はリラックスさせる神経です。悲しいという感情は、人にとってマイナスの感情です。

 

そのため、ストレスの原因でもあり、できるだけ排除しなければならない感情といえます。

そこでリラックスさせるために、涙を流すことで副交感神経が活発となり、ストレスから身を守ってくれているというものです。

 

このことは、悲しいときや辛いときには、思いっきり涙を流したほうが、生理的にも早く回復するという裏付けにもなっています。

なぜあくびをすると涙が出るのか

あくびをすると、顔の筋肉が引っ張られて、目尻の裏側にある涙をためておく涙嚢が押しつぶされます。

本来は、鼻に流れる涙ですが、逆流してしまうため涙が出たように感じるのです。

 

涙嚢にたまっている涙の量は限られているため、何度かあくびを繰り返していると、そのうち涙は出なくなっていきます。